キレ芸の条件


最近キレてますか。
そう訊かれて動きのキレを確認した人はよっぽどのお人好しなんでしょうが、そっちのキレではなく、ブチ切れるのほうのキレです。
できるだけキレないように、落ち着き払って、にこやかに生きていきたいものです。しかしそうは言ってられないこともある。生きているかぎり腹に据えかねることというのはどうしても起こってしまうものだからです。そういうことが起こるとやっぱり怒りたくもなる。我慢するのは生きる知恵のひとつだけども、我慢しすぎるのは身体に毒です。怒りはどこかで発散させないといけない。ではどうするか。
そう。お察しのとおり、キレ芸として怒りを昇華させることがたいせつです。世の中のおっさんというおっさんがキレ芸を身につけるだけで世界はだいぶよくなるはずです。

・キレ芸とはなにか
ではキレ芸とは何なのでしょう。芸という以上は、関係者を楽しい気持ちにさせないといけません。笑わせられるようになれば言うことなしですが、笑わせられないまでも、笑わせるよう頑張っている姿を見て嫌な気持ちになる人は少ない。つまり、笑わせられるよう頑張りながらキレるのがキレ芸だといえます。

・キレ芸の実践
キレ芸を行うにあたって、気をつけないといけないことはごまんとあります。
まずは立場をわきまえるということ。自分が目下にあたる場合というのは気にせずキレていっていいですが、自分が目上にあたる場合は、細心の注意を払わねばなりません。相手に抵抗を許さない状況を作ってしまってはキレ芸の根本が脅かされます。たしかに、難易度は高いのですが相手に有無を言わせないパターンのキレ芸もあります。ただしその場合、ゴールをしっかり見定めた上でないと容易に着地点を見失ってしまいます。そうなると地獄で、怒られる側もそれを見ている側も全然たのしくならない。自分のポジションをしっかりと見極めたうえでキレ芸を実践していきましょう。
怒鳴り散らすタイプのキレ芸はオーソドックスなだけによく見かけます。大きな音を立てる演出をする場合は、ものを壊さないように気をつけましょう。人・ものを傷つけた場合はこれも捕まります。絶対に人に触れないよう、十分な距離を取ってください。安心安全はキレ芸の基本です。
それから、自動車の運転においても言われることですが「だろうキレ芸」は危険です。ウケるだろう、傷つかないだろう、面白いだろう、こういった考え方は取り返しのつかない事態を招きます。彼女にはフラれ、財布を落とし、犬のウンコを踏むと同時に鳥のフンが落ちてきます。そういった事態を招かないよう、つねに「かもしれないキレ芸」を心がけましょう。彼女にフラれるかもしれない、財布を落とすかもしれない、犬のウンコを踏むと同時に鳥のフンが落ちてくるかもしれない。
お気づきかと思いますが、キレ芸というのは決して明るいものではありません。それは多分にダークなヒューモアなのです。怒りという負のムードを逆転換させ、面白のエネルギーを生み出すものです。うまく逆転換させられればそれだけの爆発力が期待できますが、それに失敗すると痛い目をみます。

・さいごに
キレ芸ばかりに煩わされていると生活の気分がわるくなっていきます。上に書いたように、すべてにわたって「かもしれない」という注意を払うことがキレ芸には必要不可欠なのですが、そんなことをしていては疲れてしょうがない。ネガティブな想像ばかりしてしまうことにもなり、健全な精神生活にとって負担は少なくありません。やはり、何事につけ怒らないようなメンタルを身につけ、それを維持することがたいせつです。栄養のバランスがとれた食生活、充分な睡眠、適度な運動を心がけたいものです。