2016-01-01から1年間の記事一覧

「さようなら」の実感

行く春や鳥啼き魚の目は泪 松尾芭蕉の句にこんなのがある。「おくのほそみち」で東北への旅に出る芭蕉が、もしかしたら自分の最後の旅になるかもしれないと思い、旅立ちの別れを惜しんで詠んだ句である。 この句では当たり前のことしか言っていない。 鳥は鳴…

なぜお前はつまらないテレビドラマを見、くだらない小説を読むのかという問いに対する「暇つぶし」以外の答え

月9(月曜日9時から放映のテレビドラマ)を見た。「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」というタイトル。 感想を結論から言うとつまらなかった。ツッコみたくなるポイントはいくらでもあるけど、そんなのは些末なこと。誰それがかわいい、誰そ…

フライは高い

タランティーノの映画を見て引き裂かれないような奴はウソだ。嘘つきじゃない。嘘だ。 ヘイトフルエイトという映画を映画館で見てきた。映画を見るためにある場所が映画館で、その映画館で見るものは映画。そう思うから僕は映画は映画館で見たい。 タランテ…

このまえ驚いたこと

この前、驚いたこと。 1.月亭方正の落語が面白かった。 2.村上ショージの漫談が面白かった。 ・はじめに 2016年現在、日本では国民のおよそ二人に一人がお笑い好きであるとされている。 これは世界でも類を見ないほどの数字であり、日本のお笑い文化の水…

否定は僕たちの記憶を生み出す

否定は僕たちの記憶を生み出す 記憶をさかのぼってどこまでいけますか? と聞かれたら、僕は「最初までいける」と答える。最初というのは生まれた瞬間のことではなく、生まれてくる前のことだ。 僕には生まれる前の記憶がある。金色の壁から光が通ってくる…

村上春樹の会話文から感じること

僕は村上春樹の小説を読むのが好きだ。村上春樹も村上春樹の小説も嫌いではない。 僕が小説を読むときにもっとも興味惹かれるのは会話文である。反対にあまり読み進めるのが得意でないのは情景描写である。 村上春樹の小説中の会話はとてもユニークだ。だか…

最近見た4本の映画の感想

映画の日(毎月1日)周辺に映画館で映画を4本見た。どれも面白かったので感想を書く。ネタバレはしないつもりだけど、ひょっとしたら勢い余ってしてしまっているかも。 ・オデッセイ ・キャロル ・ディーパンの闘い ・サウルの息子 ・オデッセイ マット・デ…

ウォーキング・ミュージックとランバンを退任したエルバス

読めない本には決まりがある。 一文の中にある単語の2つまでが分からなかったら、その文章は基本的に意味を結ばない。 一ページのなかに意味を結ばない文章が2つあったら読み通す気が失せる。3つで完全になくなる。 僕が最近読んだ読めなかった本に『服はな…

とりあえずの目的について

僕はどちらかといえば手段と目的を分けて考えるタイプだ。 目的と手段にははっきりした主従関係がみられる。目的がえらくて手段がそれに従う。目的のために手段があるのであって、その逆ではない。倒錯とかないかぎりは。 たとえば、牧場に行くのは羊を見に…

気になる時間

「還らぬ時と郷愁」という本を読んだ。 この本を読むためにはいくつか外せないポイントがあるが、まずは《逆行できないもの》という概念を理解しなければならない。逆行できないものというのは、さかのぼったり来た道を引き返したりできないもののことを指…

空をとびたいと望むことあるいは可能でないことの記述について

Oscar Isaac - Fare thee well Orignal soundtrack (Inside Llewyn Davis) If I had wings like Noah's dove I'd fly the river to the one I love Fare thee well, oh honey, fare thee well. 空をとぶことは「できないこと」のカテゴリに属する。僕たちは…

「サキ傑作集」の奇妙な読後感について

「サキ傑作集」 を読んだ。 サキ傑作集 (1981年) (岩波文庫) 作者: サキ,河田智雄 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1981/11/16 メディア: 文庫 クリック: 1回 この商品を含むブログを見る この世界にはさまざまな小説があるが、異色の小説というものだけ…