理想のタイプは清水さん


理想のタイプは?という質問は多い。誰しも口を開けば二言目にはこの質問だ。
僕はその都度、相手に合わせた回答を拵えようとして常に失敗をしてきた。相手に気を遣った結果相手を困らせることになるという悲喜劇はもう懲り懲りだ。理想のタイプは?という質問に対して回答を用意することにした。
今がタイミングなのである。
というのも、先日、理想のタイプをプリントアウトして鋏で型を抜いて3D化したような女の子と出くわしたからだ。彼女とは店員と客という関係であり、通り一遍のやり取りしかしていないので名前をはじめ詳しいことは何もわからない。
しかし、少なくともその時わかった範囲の彼女は完全なる理想のタイプであった。理想のタイプのイデア、それが目の前にありました。
これがどういうことかというと、彼女のことを僕なりの言葉で形容できれば、それ即ち僕の理想のタイプになるということで、よくある質問に対する理想の回答が用意できるチャンス到来なのです。

1.容姿
彼女の容姿について一言できるとすれば「自然」である。飲み物でいうと水である。イケメンはよく醤油顏・ソース顏・塩顏という分類をされるが、彼女は水顔だった。印象という印象がまるでなく、形容するべき顔のパーツがひとつもないように見えた。正直顔を覚えていない。髪の毛は短くなく、黒か黒に近い茶色、ぐらいのことしか思い出せない。背は僕より低かった。

2.立ち居振る舞い
顔を覚えていないながら動き方は印象に残っている。微笑むタイミング、口を開くタイミング、歩き出すタイミングがそれぞれ完璧だった。半拍置いてから動き、ゆっくり動作を完了させていく。決して慌てないが間延びもしない。山奥深くの水の溜まりを連想させる。

3.声
静かな声だが聞こえにくいわけではなかった。落ち着いているせいか低く聴こえたが実際にはそこまで低くないと思う。声の響きから呼吸するのが上手そうな印象を受けた。

以上、総合して要約すると僕の理想のタイプは「静かな水」である。苗字でいうと清水さん。メイビー。