青の時代


「青の時代」という言葉がある。ピカソの画風を時期によって峻別するとき、ピカソみずから「こっからここまで青の時代な」と言ったらしい。
ピカソの絵はあんまり知らないけど「青の時代」という言葉は言い得て妙だと感心した。たしかに人間誰しもそういう時代はある。かくいう私も今まさに青の時代を過ごしてる気でいる。
そんなわけで早速グーグルで「青の時代」を検索したところ、三島由紀夫の小説に「青の時代」というのがあるらしいことがわかった。三島由紀夫の小説はあんまり知らないけど言葉が気に入っていたので「青の時代」を読んでみた。
びっくりするほど青かった。本当に青い小説だった。三島由紀夫はすごい。「金閣寺」は読んだことがあるけどあれは金色の小説だったし、三島由紀夫はすごい。
青の時代もそうだが、時代というのを意識するとき、人はそれを過去にする。今現在のことでも、ひとつの時代として考えるとたちまち過去感がでる。今を時代として考えることは、未来の一時期から今を眺める視点を持つことが含まれる。
生きている全員に共通するのは「今」に参加しているという事実だが、時代を意識することにはそれを俯瞰するようなところがある。
三島由紀夫の「青の時代」にしてもそうで、すでに経過しつつあるところからそれを眺めているような視点があって、そのことが好ましい。
「青の時代」というときには、青じゃない時代に片足をつっこんでいる状態にいるわけで、そういう過渡期ならではの景色というのに青はものすごくマッチする。
おっさんは「フッ、青いな。」みたいなことをよく言うイメージがあるんだけど、両足とも青から離れた人が「青い」とかいうのは青の青さを言っているんじゃなくて、適当言っているだけだと思う。一応記憶のなかの青を思い出してるんだろうとは思うけど、フッとかいって笑う人間にまともな記憶力があるとも思えない。
そう言ってる私にしても真っ当な記憶力があるとは思えないので、今見える青をしっかり見ておこうと思う。


青の時代 (新潮文庫)

青の時代 (新潮文庫)